信州・無言館へ・・・ [その他]
上越自動車道の上田菅平で降りておよそ30分走ると、小高い丘の上に、その十字架のような建物があります。
戦没画学生の絵を展示した美術館、【無言館】です。
何も知らずに入れば、ちょっと変わった作りの小さな美術館です。
しかし、血に染まった軍服も、銃痕のあるヘルメットも、熱で溶けた食器も、焼け野原や死屍累々の写真もないのに、これほど戦争の惨さを伝えているところもないでしょう。
10年前に開館した頃からいつか行きたい、行かなければ、と思っていました。
上から見ると十字架の形の建物は、入り口も教会のような造りでした。
入った瞬間からなぜか涙がこみ上げてきました…。
「あと2分でも2秒でも絵筆を握っていたい。帰ってきたら必ず完成させるから」、と恋人をモデルにした裸婦像を未完のまま出征して帰らなかった若者。
「いつか召集令状がきたらもう描けないから」と、祖母の肖像画を描きなから語り、モデルになっていた祖母は何も語らず一筋の涙だけがあったというエピソード。
十字架の内部、打ちっぱなしのコンクリートに飾られた数々の絵は、すべてこのような背景を持ちながら戦争に行って帰らなかった画学生の作品です。
生きていれば素晴らしい作品をたくさん残してくれたかもしれません。
夢も、希望も、未来も、愛する者との絆も、すべて断たれて若くして散った彼らの作品を是非見ていただきたいと思います。
見終わって外にでると、梅雨の合間の太陽がまぶしく、草の匂いと、ギーギーというセミの声がいのちを感じさせました。
建物の前には「記憶のパレット」と題された大きな黒御影石のパレット型の碑があり、名前とともにこう記されていました。
「私たちの芸術と
私たちの銃の前にあった
すべての芸術のために」
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おかえりなさいませ。
私も、行かねばならない、と思っています。
いかなることがあろうと、戦争はダメ。武器を持つこともダメ。
しんみりと読ませていただきました。
いつも思うのです。息子が戦争に行くことを想像するだけで気が狂いそうになる・・・。
by TERESA (2007-06-28 23:35)
ぜひ、行ってみたいと思いました。
戦争で、若くして亡くなった方達に対しては、
切ないような、苦しいような、
また、感謝したい気持ちとか、
言葉では表わせない感情で、
いっぱいになります。
写真での印象だけですが、
美術館のたたずまいが、
墓標のように見えました。
by トニー (2007-06-29 00:16)
これがもう最後かも知れないと思ったら・・・その時、僕も間違いなく絵を描くと思います。
そして最近思ったことは、これがもう最後の作品かも知れないと思って、ひとつひとつ描いていくということです。
そして絵を描けるということは幸せだということです。
by leon (2007-06-29 06:43)
無言館という名前もまた意味深ですね。
絵というのは見る人に様々なイマジネーションを与えるものですし、そのうえこのような背景を知った上となっては、たまらなく感じてしまいます。
by タケ (2007-06-29 19:57)
お見舞い、ありがとうございました。もうすっかり良くなりました。
この「無言館」のことは知っていましたが、まだ行ったことはありませんでした。貴重なお話で、機会がありましたら行ってみたいところですね。
by (2007-06-29 20:14)
考えさせられるお話と情報ありがとうございました。一度訪れたい美術館ですね!
by 八王子の森 (2007-07-01 14:41)
●TERESAさん、私も息子を持って、あらためて戦争はいけない、と痛感しています。それも、徴兵のある国なら適応するだろうという年齢になるにつれてますます・・・。
ぜひお出かけください。
●トニーさん、確かに墓標のように見えますね・・・。神聖な感じのするところでした。
●leonさん、戦場にあっても絵筆をとってスケッチをしたり、家族に絵葉書として送ったり、中には画材を家族に頼んで送ってもらった人もいるようでした。平和な世だからこそ、絵を多くの人に観てもらえるんですね・・・。
●タケさん、本当に【無言館】という名前もいろいろな想いを感じさせます。
●cocoa051さん、回復されてよかったですね。
機会があればぜひお出かけください。画集も何冊か出ています。
●八王子の森さん、心を扱うものとしても、訪れて本当に良かったと思います。
by michaela (2007-07-02 08:41)
私も、いつか行ってみたいです。
ホント、命ある限り・・・
自分が出来る事を、精一杯やりたい・・・
そう、思いますね。
色々とあって・・・
ミクシィを退会しちゃいました。
何の予告もなく・・・すみません。
でも、michaelaさんとの繋がりまで失いたくないので・・・
また、ブログの方に遊びに来ますね・・・
by 郁 (2007-07-03 13:56)
●郁さん、コメントありがとうございます。急に消えたのでちょっと心配していましたが、こちらに来ていただけて嬉しいです!
無言館、機会があればぜひいらしてください。男の子を持つと、この悲しみを味わいたくないとつくづく思います。
お互い、精一杯生きましょうね。
by michaela (2007-07-04 08:13)
無言館を愛する一人として、書き込ませていただいています。
私は昨年の夏、偶然にそこを訪れ、それ以来心から離れなくなっています。今年もまた梅雨が明けたらきっと訪れるのではないでしょうか。
決して大きな美術館ではないのですが、入れ物の大きさでは測れないとっても大きなものが詰まっている気がしています。絵の一枚一枚に涙が出て止まりませんでした。泣きたい訳ではないのに、自然に溢れる涙というものを私は初めて感じました。
いろいろな絵に思いがありますが、忘れられない絵の一枚は、兄が描いた一枚の妹の水彩画でした。とても大きな絵でした。
白地に青い花模様が描かれた可愛い浴衣姿の15,6歳くらいの少女でした。竹下夢路の絵を思わせる細かい描写で、線の一本一本に兄の妹への深い愛を感じました。
絵の正面に進んで、兄が筆をとった位置に立ってみました。そして当時その前にいたはずの妹の姿を思いました。そのときの二人の楽しそうな会話が聴こえてきそうでした。私の目は涙でもう絵が見えなくなっていました。
あの絵にまた逢いにいきたいです。そして、今度は二人の会話に耳を傾けたいと思っています。
by ぴ絵呂 (2007-07-22 08:36)
●ぴ絵呂さん、書き込みありがとうございます。
私もなぜ涙がでるのかわからないくらい、絵を見ただけで涙があふれてきました。感動というのとは違いました。ぴ絵呂さんもそうだったのではないでしょうか・・・。
どの絵も、モデルの人への愛情が感じられ、だからこそ余計に切なくなったのかもしれませんね。
兄が筆をとった位置に立って、妹の姿を思う・・・。そこから聴こえてきそうな会話・・・素敵なコメントをありがとうございました。
by michaela (2007-07-22 11:49)
私の拙い投稿へのコメントをいただき、ありがとうございます。
あの絵は、横向きの妹さんを描いたものですので、私には二人のこんな会話が聴こえてきました。
「ねぇ、お兄ちゃん。まだなの。私こっちを向いてるの疲れちゃった」
「もうちょっと、もうちょっとだけ」
「私、きれいに描けてる? ちょっと見せて」
「あ、バカ、動くな。髪の感じがわかんなくなっちゃったよ」
あの日はここまでしか聴けませんでした。ここまでで、私は涙で前が見えなくなってしまったからです。
今度行ったら、その先の会話を聴きたいと思っています。
下記リンクに、学生を連れていった先生のコラムが載っています。私はこの記事に大変感銘を受けました。
http://facta.co.jp/article/200706026.html
下記に、お話に出てくる水彩画が載っています。この絵はなかなかネットでは見ることが出来ません。とても貴重なものだと思います。
http://sbc21.co.jp/tv/mugonkan/bangumi.html
by ぴ絵呂 (2007-07-22 17:56)
●ぴ絵呂さん、素敵な会話ですね・・・本当に画面から聞こえてきそうです。続きもぜひ聞かせてくださいね。
HPのご紹介ありがとうございました。見せていただきました。
無言館という名のとおり、言葉にならない想いを多くの人に抱かせてくれる場所だと思います。
そして戦争のむごさを、言葉以上に雄弁に物語っている場所だとも思います。
でも・・・そのメッセージを汲み取る想像力が欠けている人が多いことも、悲しい事実ではないでしょうか。
また訪れたいと思っています。
by michaela (2007-07-23 09:03)