記憶を書き換える [その他]
少し長くなるので、2日に渡って書きます。
あるところに一人の母親がいました。
一人娘をそれは大事にしていました。
あるとき、娘が結婚の話を持ってきました。相手は娘の同級生、母親も顔を知っている男性でした。
ところが、母親は猛反対、気も狂わんばかりに娘と応酬する日々が続きました。
父親は賛成とも反対ともはっきり示さず・・・娘はとにかく母親の賛成を取り付けることだけを考えていました。
やがて、どのような経過を経てかは定かではありませんが、ともかく結婚は許されました。
が、母親は今度は自分の結婚式を挙げるかのごとく、式場選びから引き出物選び、招待者や席次決めと采配を振るい始めました。
そんなこんなで年月も流れ、娘もあと何年かで銀婚式を迎えるような年になりました。
その間父親は亡くなり、母親は今では娘婿を娘以上に頼りにするようになっていました。
娘はといえば、あんなに猛反対した母親が夫を頼りにしてくれるのは喜ばしいことではあっても、20年以上経ってもかつて結婚に反対して浴びせられた一言一句を忘れられるわけはなく、時に複雑な思いでいました。
そんなある日、娘夫婦と友人夫婦も交えた場で、アルコールも入って気分が良くなった母親の一言に娘は愕然としました。
「この人たち(娘夫婦)が結婚するって言ってきた時、おばあちゃま(母の母)に相談したら、『それはいいじゃない、ぜひ結婚させなさい』って。私はもう始めから大賛成だったからこれは良かったと思って・・・」
あの猛反対したのは一体誰!? いろいろな言葉を浴びせてきたのは誰だったの?
娘は混乱しました。
猛反対したことを忘れてしまったのだろうか?
すがりつかんばかりにして娘を結婚させまいとした、あの行動、あの言葉はなかったことにされたのだろうか?
自分が反対したことはなかったことにして、結婚が決まってからのことだけを記憶にしているのだろうか?
どうしてこんなことが言えるのだろうか・・・?
<続く>
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